映画雑感

見て楽しんで、知って楽しむ。

【映画】「ダンテズ・ピーク」

ロジャー・ドナルドソン監督の「ダンテズ・ピーク」(原題:Dante's Peak, 1997)のご紹介です。

【あらすじ】
ハリー・ドルトン(ピアース・ブロスナン*1)は噴火の事故で恋人を亡くした過去を持つ火山学者です。ある日、Dante‘s Peak(ダンテの峰)という休火山の調査派遣依頼が来ます。

【雑感】
緊迫した冒頭5分間
冒頭の5分間に、火山学者ハリーが体験した噴火の状況が描写され、闇の中で灰の雨や岩が降り注ぎます。冒頭で出し惜しみなく地獄絵図が描写されます。

伏線が分かりやすく安心して見られる
例えば調査ロボットの故障原因になるという理由で、調査ロボットからNASAの超低周波発信機の部品が外され、それをフレームいっぱいに映す描写があります。この描写でストーリーにおいてその発信機が意味をなすということを理解させ、勘の良い方であればエンディングもすぐに分かるでしょう。また、2万人以下の住みやすい町ランキング2位の授賞式にハリーが調査対象の火山のふもと町に到着しますが、住みやすい町が住みにくい町になる展開になるのだろうと予測ができます。他にもこういった描写がありますが、私はこういう映画が好きです。

【終わりに】
リンダ・ハミルトン*2も出演しておりキャストが結構豪華です。そういえば、最初に噴火の事故で恋人を亡くした火山学者が再度火山噴火に立ち向かうというストーリーはサイモン・ウェスト監督の「ヴォルケーノ・パーク」でもありました。こういう展開は定番なのでしょうか。

以上読んでいただきありがとうございました。

影技法についてはこちらの記事から。
zak-kan.hatenablog.com

サイモン・ウェスト監督の「ヴォルケーノ・パーク」はこちらの記事から。
zak-kan.hatenablog.com

 

*1:007のかつてのジェームズ・ボンドです。

*2:ターミネーターのサラ・コナーです。

【映画】「ショックウェーブ」

アダム・ハーヴィー監督による「ショックウェーブ」(原題: Shoke Wave, 2020)のご紹介です。
こちらはオーストラリアのABCが制作したドキュメンタリー映画になります。

【あらすじ】
2020年8月4日、レバノンの首都ベイルート港で起きた爆発事故について、被害者インタビューを通じて現場で起きた惨劇に迫ります。

【雑感】
偶然起きた事故ではなく必然的な人災
爆発事故の直接的な原因は港の倉庫に放置されていた約2700トンもの硝酸アンモニウムでした。モザンビーク行きの貨物船に積まれていたものが没収され、そのまま住民がすぐ近くにいる港の倉庫に積まれ、6年間も放置されていたのです。
国内関係機関から度々政府に対して警告がされ続け、2020年にはState Securityから“could cause full destruction of port”(港を全壊する可能性がある)とも報告されていたのですが、政府は危険性を知りながら対応を怠っていました。

リアルなCG処理以上の恐怖
最初の5分に事故の衝撃が凝縮されています。たくさんのカメラが事故発生時の状況を撮っていました。火災発生や小爆発時からのマンション住民や歩行者のカメラ、結婚式の撮影カメラ、歩道やマンションや病院の監視カメラ等です。本作品では最初の5分に様々な映像を提示し、その後、撮影していた方や被害に遭われた方にインタビューをして当時の具体的な状況に迫ります。
色々な映画で大爆発の映像を見ることはありますが、実際はあんなものではないと痛感します。紛争地で爆発が起きたという訳ではなく、幸せな日常が広がる港町で突然起きた大爆発で、天国から地獄に、とはまさにこのことだと思います。

【終わりに】
下のAmazonの画像に映っている切り立った崖のようなものは建物だったものというのですから本当に恐ろしいです。

 

4月の映画振り返り(No.1と一覧)

今月視聴した映画を振り返りたいと思います。

【今月のベスト映画】
アッパス・キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」

今月は20作弱を視聴して選ぶのに迷いましたが、ストーリーとしては分かりやすいけど内容は深いし、誰も死なずに悲しむ必要はないし、肩肘張らずに見られる日常の演出が素晴らしかった本作を選びました。

zak-kan.hatenablog.com

【4月の映画一覧(上から記事投稿順)】
【映画】ジム・キャリーのエースにおまかせ! - ザッカンの雑感
【映画】「マイ・ボディガード」 - ザッカンの雑感
【映画】「ヴォルケーノ・パーク」 - ザッカンの雑感
【映画】「ゲットバック」 - ザッカンの雑感
【映画】「ワイルドカード」 - ザッカンの雑感
【映画】「ゼロ・グラビティ」 - ザッカンの雑感
【映画】「ヒッチャー」 - ザッカンの雑感
【映画】「ザ・エージェント」 - ザッカンの雑感
【映画】「サイコ」 - ザッカンの雑感
【映画】「グエムル - 漢江の怪物 -」 - ザッカンの雑感
【映画】「MEG ザ・モンスター」 - ザッカンの雑感
【映画】「ロッキー」 - ザッカンの雑感
【映画】「2001年宇宙の旅」 - ザッカンの雑感
【映画】「友だちのうちはどこ?」 - ザッカンの雑感
【映画】「メン・イン・ブラック:インターナショナル」 - ザッカンの雑感
【映画】「トップガン」 - ザッカンの雑感
【映画】「ゴジラ」(1954) - ザッカンの雑感
【映画】「東京物語」 - ザッカンの雑感
【映画】「とうもろこしの島」 - ザッカンの雑感

【映画】「とうもろこしの島」

ギオルギ・オバシュビリ監督の「とうもろこしの島」(原題: Simindis kundzuli)のご紹介です。

【あらすじ】
紛争地域の敵味方に挟まれる川の中洲で、ある老人が家を建て、とうもろこし畑を耕します。

【雑感】
1回目の視聴で読解力不足で理解できず「私は何を見たのだろうか・・・」という気分になりました。消化不良だったためインタビュー動画から理解した内容を解説したいと思います。

人間と自然との関係
まず、人間と自然との関係がメイントピックになっています。*1
人間は自然に依存していて、生まれてから死ぬまで、自然が日々の生活に結びついていることを表現しているそうです。紛争地域を背景としているのは、"人間と自然" に対する "人が持つ様々な問題"という比較対象を持ち込むためです。*2
自然に依存する人間にとって、紛争は些細な問題であることを表現しているのがわかります。

リアリティある自然との共存
川ととうもろこし畑のアイディアは、前作の脚本家とのミーティングで、川と地域の人々によるとうもろこしの耕作について実話を聞いて、そこから着想を得ました。*3
この中洲はなかなか見つからず、映画に登場する場所に至るまで2年以上かかったそうです。春夏秋冬を表現できる場所を探す必要があったのですが、自然はコントロールできず丁度いい撮影場所を探すまでにそれほど時間がかかってしまいました。運よく水位を調整できる場所が見つかり島を人工的に作り、本作の撮影に至りました。*4
とうもろこしの苗から刈り取りで春夏秋冬を表現しつつ、人間の始まりと終わりに自然が常に関わっているということの表現がインタビューを聞いてよく理解できます。

妥協しないキャスティング
主演女優は5,000人以上の候補がいましたが、自分の中で納得できるキャストなかなか見つからず、ネットで偶然発見した女性が選ばれたようです。*5
こだわっただけあって、この映画にピッタリ合っているように感じました。

【終わりに】
セリフがほとんどない映画で初見での理解が難しいですが、なかなか奥が深く、二度三度見れると思います。
理解できると点と点がつながって監督のメッセージを具に感じ取れます。
(読解力を鍛え直します。。)

 

 

*1:Interview with George Ovashvili / Rozhovor s Georgem Ovashvilim - YouTubeより。

*2: ČSFD Interview with George Ovashvili / ČSFD rozhovor s Georgem Ovashvilim - YouTubeより。こちらの動画は質問が的確でメインテーマを理解しやすかったです。

*3:*2に同じ。

*4:*1に同じ。

*5:*1に同じ。

【映画】「東京物語」

小津安二郎監督の「東京物語」のご紹介です。

【あらすじ】
尾道から東京へ、老夫婦(平山周吉と平山とみ)が子供たちの家に訪問します。

【雑感】
家族像の描写がリアル
親が息子娘らの家に訪問するわけですが、息子の医者幸一は東京を巡ろうと予定していた日に忙しくて当日中止。息子昌二(戦死)の妻紀子は忙しい仕事を休んでまで東京案内をしてくれる。娘の美容師志げは仕事の忙しさを言い訳に周吉ら両親を熱海旅行に送る。このような息子娘らの三者三様の対応がいろんな家族像の現実を表現しているように感じました。
個人的には志げの態度が終始腹立たしいですが、彼女も忙しくて何もしてあげられないから、温泉街で楽しんでもらおうということで良かれと思って両親を送り出すわけです。両親は別に美味しいものを食べたいわけでも温泉に入りたいわけでもなく、子供と一緒にいたいわけです。その親心が分からず良かれと思って熱海に送る子どもの対応、そういうことは私もしているかもしれない、そういう思いに駆られました。このエピソード含め、お金じゃないなあ、現実ってこういうものだよなあ、と感じさせられます。

【終わりに】
コロナで人と会う機会も昔より減りましたが、この映画を見て親と会いたくなりました。
寒い日に湯船に浸かるとジワ〜っと温かさが体に広がりますが、そんな感じで、この映画を見ていると人生の言葉にできない色んな感情がジワ〜っと広がります。
英国映画協会の監督が選ぶBEST 100の1位に選ばれてますが、この良さは日本人特有ではなく世界共通ということのようです。これはおススメです。