映画雑感

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【映画】「ゴジラ」(1954)

本多猪四郎監督の「ゴジラ」のご紹介です。

【あらすじ】
原因不明で立て続けに起こる船の沈没から始まった悲劇。水爆実験により呼び起こされたジュラ紀の生物ゴジラが東京を襲います。

【雑感】
ゴジラの生態
深海に潜んでいたジュラ紀の生物がアメリカの水爆実験により、深海から陸上に現れるという設定です。水爆実験による放射能を多量に浴びてなお生存している驚異的な生命力を保持しており、完全生物であると言っても過言ではないでしょう。
この生物は大戸島で昔から「ゴジラ」と呼ばれており、以前にも深海から海の表層まで現れていたことが分かります。でもおそらく地上の大破壊には至らなかったわけで、水爆が逆鱗に触れてしまったということだろうと思います。水爆実験はもはや我慢ならない、というのを表現しているのかもしれません。

深海という未知の世界へのワクワク感
現在において最新のテクノロジーをもってしても深海はまだ調べ尽くされておらず、今でも新種生物が度々発見されているわけです。映画が公開された1954年当時は200〜300m程度しか深海調査が進んでおらず*1、深海は本当に未知の領域でした。今でも、もしかしたらゴジラのような生物がいるかもしれないというワクワク感を見ていて感じますが、当時の人、特に子どものワクワク感はとんでもないものだったと思います。

水爆実験への風刺
1951年は史上初の水爆実験であるアイビー作戦が行われた年でした。その3年後に公開された本作は水爆実験への批判とアメリカに物申せない日本政府の態度への批判ということが直接的に理解できます。特に上陸した際に国会議事堂を破壊するとすぐに海に帰るという、あたかもそれが目的だったかのような描写が面白いです。公開された同年に行われたキャッスル作戦により第5福竜丸事件が起きてしまい、アメリカと日本政府への不満をまさに表現した形となりました。

【終わりに】
子供は深海へのワクワク感、大人は風刺による満足感、誰でも楽しめる映画だと思います。最近のゴジラ映画では効かなくなったゴジラのテーマソングがあると、やっぱりゴジラはこうでなければと思ってしまいますね。

ちなみに本作は黒澤明が選んだ100本にも選ばれている作品ですし、ただの怪獣映画と思って見ないのはもったいないと思います。

以上読んでいただきありがとうございました。

ゴジラ

ゴジラ

  • 宝田 明
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*1:深海探査艇 - Wikipediaより。青函トンネルの建設に用する「くろしお」が現役の時期でした。