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映画「キャリー」のリメイク、新旧ファンにどう響く?

みなさん、Netflixで配信されているリメイク版「キャリー」はもうご覧になりましたか?スティーブン・キングの名作と70年代の映画が、現代風に生まれ変わっています。このリメイクは、オリジナルとは異なる点が多く、見る価値がありますよ。今回はリメイク版「キャリー」を徹底考察します。

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あらすじ

キャリー・ホワイト(Chloë Grace Moretz)は、内気で敏感な高校生です。彼女は厳格な宗教的教育を受ける母親、マーガレット(Julianne Moore)との間で葛藤を抱えています。学校では、クリス・ハーゲンセン(Portia Doubleday)などのクラスメートからのいじめに苦しみますが、体育の教師、ミス・デジャルダン(Judy Greer)は彼女に同情し、支えとなります。

キャリーはある日、自分に超能力があることに気づきます。彼女はこの力を理解し、使いこなす方法を学び始めます。その一方で、スー・スネル(Gabriella Wilde)はキャリーへのいじめに後悔し、彼女に対して償いの行動をとります。スーの彼氏であるトミー・ロスにキャリーをプロムに誘わせ、キャリーはこれを受け入れます。プロムに出席するためのドレスを自分で作り、プロムに向けて期待で胸を膨らませますが……。

リメイク版「キャリー」に見る現代の課題:インターネットいじめと孤独の交差点

リメイク版「キャリー」では、オリジナル作品の核となるテーマ、すなわち孤立したいじめられっ子の復讐劇に、現代的な要素が加わっています。特に、このリメイクでは、インターネットいじめという現代の社会問題に焦点を当てています。これは、1976年のオリジナル映画やスティーブン・キングの小説にはなかったテーマです。

オリジナルの「キャリー」では、彼女は学校でのいじめや家庭内の虐待に直面しており、その孤立感は物語の重要な要素でした。しかし、リメイク版では、キャリー・ホワイトはさらに複雑な問題に直面しています。インターネットの普及により、彼女はオンライン上でもいじめのターゲットになっているのです。これは、現代社会において多くの若者が経験している現実を反映しています。

インターネットいじめは、従来のいじめとは異なり、被害者にとって逃げ場がほとんどないという特徴があります。学校を離れても、SNSやメッセージアプリを通じて、いじめは続きます。このリメイク版では、キャリーがこのようなオンラインの攻撃にどのように対処するのか、またそれが彼女の精神状態や超能力にどう影響を及ぼすのかが描かれています。

リメイク版「キャリー」のもう一つの重要な点は、キャリーがオンラインとオフラインの両方で孤立しているにも関わらず、彼女の内面の強さと成長が描かれていることです。彼女は、周囲からの圧倒的な否定にもかかわらず、自身のアイデンティティを見つけ、受け入れる過程を経ています。これは、多くの現代の若者にとって共感できるテーマです。

このように、リメイク版「キャリー」は、単なる復讐劇を超え、現代の若者が直面する現実的な問題を取り入れています。このアプローチにより、古典的な物語が新しい世代の視聴者にも響く作品に生まれ変わっています。インターネットいじめというテーマは、キャリー・ホワイトのキャラクターに新たな深みを与え、現代社会における重要な対話を促すものとなっています。

リメイク版「キャリー」の深層解析:超能力を通じた自己受容と成長の物語

リメイク版「キャリー」のリメイクにおける、キャリー・ホワイトの超能力の新たな扱い方は、非常に注目に値します。オリジナル映画やスティーブン・キングの小説では、キャリーの超能力は、彼女が経験するいじめや家庭内の虐待に対する復讐の手段として描かれていました。これらの能力は、彼女の感情の高ぶりと密接に結びついており、最終的な爆発的なクライマックスに向けての構築が行われていました。

しかし、リメイク版では、この超能力の描写に大きな変更が加えられています。この新しい解釈では、キャリーの超能力は単なる復讐の道具ではなく、彼女の自己受容の過程の一部として描かれています。これは、キャリーのキャラクターに新たな次元を加えるとともに、視聴者にとってもより深い共感を生み出す要素となっています。

このリメイク版でのキャリーの超能力は、彼女が自分自身との闘い、つまり自己認識と自己受容の旅をする上で、重要な役割を果たします。彼女は自身の能力を恐れ、隠そうとしますが、徐々にこれを自己表現の一形態として受け入れ、自分自身をコントロールする力として使い始めます。このプロセスは、特に現代の若者にとって重要なテーマである自己受容と自己肯定に強く共鳴します。

このように、リメイク版「キャリー」では、超能力がキャリーの内面の成長と自己発見のシンボルとして機能します。これは、従来の復讐の物語から一歩進んで、視聴者により深い感情的なつながりと、現代的な解釈を提供しています。キャリーの力は、彼女自身の内面の葛藤と、周囲の世界との関係を探求するための鍵となっています。

このアプローチは、キャリーのキャラクターを単なる被害者や復讐者から、自己成長と変革の旅をする人物へと変えています。これにより、物語は単なるホラー要素を超え、視聴者にとっての共感と理解の深化を促す、より深い心理的なドラマへと昇華されています。

映像で語る心の叫び:リメイク版「キャリー」のカメラワークが描く孤独と超能力

このリメイク版で目立つのは、キャリー・ホワイトの内面を映し出すために用いられる独創的なカメラワークです。特に、キャリーの孤独や内面の葛藤を視覚的に表現するために、クローズアップと手持ちカメラのショットが効果的に使われています。

クローズアップは、キャリーの表情の細かな変化を捉え、彼女の感情の動きを視聴者に直接伝えるために使用されます。彼女の目の動き、微細な顔の表情、そして時には呼吸の様子までが映し出されることで、キャリーの心情を深く理解することができます。これにより、彼女の感じている痛みや苦悩、孤独感がよりリアルに感じられるのです。

一方、手持ちカメラの使用は、キャリーの周囲の世界との距離感を表現するのに役立ちます。手持ちカメラによる不安定な映像は、キャリーが感じている世界との乖離や疎外感を視覚的に表現します。また、この手法は、彼女の不安定な心理状態を反映し、視聴者に彼女の感じている不安や緊張感を共有させる効果があります。

さらに、これらのカメラワークは、キャリーの超能力の発動シーンにおいても重要な役割を果たします。彼女の力が発動する瞬間には、カメラは彼女の表情に密着し、その後、手持ちカメラを使って周囲の混乱や破壊の様子を捉えます。これにより、キャリーの超能力が引き起こす感情の爆発が、よりダイナミックかつ感情的に視聴者に伝わるのです。

リメイク版「キャリー」のカメラワークは、単なる映像技術を超えて、物語の重要な語り手となっています。キャリーの孤独、不安、そして力の発現が、これらの巧妙なカメラワークを通じて、深く、リアルに描かれているのです。

終わりに

私は、このリメイク版「キャリー」が、オリジナルのファンだけでなく、新しい世代の視聴者にも響く作品だと感じました。新旧の要素が見事に融合し、新しい視点で物語が語られているので、ぜひおすすめしたいです。

「あの人いなくなってほしい」が叶うのは幸せか? - 映画「テルマ」(Thelma, 2017) -

監督・タイトル

ヨアキム・トリアー監督の「テルマ」(Thelma, 2017)。

あらすじ(ネタバレあり)

敬虔なクリスチャンの両親元で厳しく育てられた*1テルマ(エイリ・ハーボー)。

両親から離れて一人暮らしで大学生活を始めるが、図書館にいた女性を見た直後、突然テルマは痙攣を起こして倒れてしまう。(同時にカラスが建物に衝突する。)

その日から悪夢を見たり、痙攣を起こしたりと普段と違うことが起こり始める。

そんな中で、図書館で見た女性アニャ(カヤ・ウィルキンス)と友人として仲良くなる。

ある晩、突然アニャがマンションの外庭に現れる。

アニャがなぜ来れたのか2人とも理由は分からない。

しかしそれをきっかけに関係を深め、夜遊び、飲酒、喫煙など*2に興じるようになる。

キリスト教の教えに反してアニャと友人以上の関係になるも、教えとの葛藤に苦しみ、アニャと距離を置く。

(子供の頃のシーンに移る。)泣き叫ぶ赤ちゃんの弟をうるさいと思って目をつぶると、突然弟が消えてしまう。

(現在に戻る。)原因不明の痙攣を調べるため、連泊での精密検査を実施する。

精密検査中にテルマが痙攣を起こし、テルマも含め誰にも知られずにアニャが消える。

検査の結果、医師からはストレスによるものと診断されるが、ずっと前に死んだはずの祖母がまだ精神病棟にいると知らされる。

精神病棟に行くと、存命の祖母が自分と同じような苦しみを持っていることを知る。

アニャが数日間消息がつかめていないことが分かる。

アニャの部屋に行くと、ガラスに複数本の髪の毛が埋まっているのを見る。

- ここからはぜひご視聴ください。 - 

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感想

終始緊張が溶けず、じわじわとエンディングに向かっていく。

無駄なセリフはなく、喋る人間を撮るだけじゃ映画ではないんだ、という映画の良さここにあり、と感じさせました。

表現が稚拙ですが、めちゃくちゃ面白かったです。

さて、本記事タイトルに対する私なりの答えは、自分に害をもたらす人がいることも不幸だし、その人が思い通りにいなくなるのも不幸である、と思っています。

私は仏教徒ではないですが、ブッダの「人生の本質は苦である。」という教えは結構納得しています。

人は欲求が尽きません。

子供が欲しくて苦しかったけど、子供ができると子育てが忙しすぎて苦しい。

お腹が空いて苦しかったけど、食べたらお腹いっぱいで苦しい。

眠くて苦しかったけど、寝たら寝過ぎて苦しい。

お酒が飲みたくて苦しかったけど、飲んだら頭が痛くて苦しい。

そんなことが蔓延っています。

そんな苦しみから解放される手段に瞑想があります。

面白いのは、単に宗教的な修行に過ぎないと思える瞑想が、科学的にも精神を安定させる手段として非常に有効であるということが近年分かってきたことです。

英語ではマインドフルネスと言い、欧米で超大流行りの上で日本に逆輸入され、今の日本*3では「マインドフルネス」という呼び方の方が市民権を得ているかもしれません。

クリスチャンのテルマでも、仏教的な瞑想では無く、マインドフルネスとしての瞑想であれば受け入れられて本作のようなスリラーは起きなかったでしょう。

ちなみに以下の図書はアメリカのマインドフルネスブームの火付け役となった方の本ですのでご参考までに。

(ジョブスも愛読していたとのこと。)

 

以上読んでいただきありがとうございました。

*1:禁酒であったり、ロウソクにテルマの手を近づけて「地獄はこんな感じだ」と教えたり、毎晩心配で電話をかけるなど...

*2:ノルウェーでは喫煙、ビール、ワインは18歳、スピリッツは20歳からなので作中で違法ではない。

*3:歴史的に宗教色を帯びると敬遠されるのでカタカナの方が良いのかも

エイリアンの唾液はアレでできている - 映画「エイリアン」(Alien, 1979) -

リドリー・スコット監督の誰もが知る「エイリアン」(Alien, 1979)ではエイリアンの口から大量の唾液が垂れます。

この唾液はKYゼリーで作られています

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KYゼリーというのは、本来は医療用や日常生活で使われる、体にやさしい潤滑液です。たとえば、体の乾燥を防ぐためや、医療機関で検査(胃カメラ尿道カテーテル等)の際に使用されることもあります。それが、エイリアンという映画では、エイリアンの体から出るネバネバした液体として使用されました。

映画の中で、エイリアンが動くたびにネバネバとした液体が見られるのは、このKYゼリーを使って表現されているんです。なぜKYゼリーを使ったかというと、透明で、水に溶けやすく、人の体にも安全なので、映画の特殊効果としては非常に使いやすかったからです。

つまり、KYゼリーは日常生活で役立つ商品ですが、映画「エイリアン」では、エイリアンの不気味でリアルな表現を作り出すための特殊効果として活用されたんですね。

エイリアンはSFホラーの金字塔ですが、ゼリーでよだれを表現していると知ってしまうと見る目がおかしくなりますね。撮影のためにこのゼリーをカート一杯にして薬局やスーパーを駆け回っていたかもしれないと思うとスリルも飛んでしまいます。映画は色んな見方がありますが、唾液の成分を知った上で再度視聴してみてはいかがでしょうか。

ちなみに私が好きなシーンは船長であるアーサー・ダラス(トム・スケリット)が襲われるシーンです。襲うというよりも、いないいないばあ!と驚かそうとしているように見えて、これもまた可愛らしいです。(可愛らしい驚かし方なので個人的には違和感があります。)ディレクターズカット版では襲われた時にはまだ殺されていないストーリーになっているので、本来的には本当にサプライズだけだったみたいです。

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以上読んでいただきありがとうございました。

ゾンビが実在するならまずはこれを買いたい(【映画】「バイオハザード」)

生ハムを乗せるオシャレなまな板は持ちやすくて攻撃も防御もできるため、私は普段から「世界が破滅に向かっている時に役立つ武器」と呼んでいます。(周囲の人は理解してくれる。)

このまな板に最近カッティングボードという名前があると知りました。

個人的にはこういういい感じの木目調が好きですが、持ち手がもう少し長い方が振り回しやすく終末向きだと思います。

このカッティングボードに生ハムを乗せて食べつつ、ゾンビが来たら攻撃を防いで後頭部を殴る。

そういう便利な使い方ができるわけです。

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扱いが難しいのは、ゾンビを倒した後にこれを使って食事をすると感染する危険性があるので、複数購入しておいてしっかりと殺菌乾燥させる時間を取らなければいけないことです。

ゾンビウイルスがどのように除菌できるか知られていないので、キッチンハイター、アルコール、煮沸と用心が必要でしょう。

そんなことをちょうどポール・W・S・アンダーソン監督の映画「バイオハザード」(Resident Evel, 2002)を見て思い出しました。

youtu.beこのポール・W・S・アンダーソン監督ですが、バイオハザードシリーズの最終章まで全て監督しているとのことで、ジュラシックパークでもハリーポッターでもシリーズ内で転々と監督が変わるものですから驚きです。

1人の監督ならシリーズ内で一貫した筋を作れるので、そういう意味でバイオハザードシリーズは内容がスッと入りやすい作品になっていると思います。

全部担当していることに加え、主演のミラジョボビッチと結婚までされていて、バイオハザードが人生そのものみたいな方ですね。

ちなみにバイオハザードのゲームシリーズでは一切登場しないアリスがなぜ映画では主人公になっているのか、疑問に思う方もいるんじゃないでしょうか。

実は女性主演のアクション映画を作りたいというのが理由だったみたいです。*1

引用記事中にはそのように書かれており、ジルは主人公柄ではないのか?など微妙な疑問は残りますが、アリスだからここまでヒットしたのだろう、やはりジルは不向きだった、そういうことなのだと思います。

【映画】「Run/ラン」

タイトル、配信年

RUN, 2020

監督・キャスト等

監督: アニーシュ・シャーガンティ

ダイアン・シャーマン(母親役): サラ・ポールソン

クロエ(主人公・娘役): キーラ・アレン

あらすじ

未熟児で産まれた高校生のクロエは、下半身が麻痺し、喘息、皮膚、心臓の持病等を患いながら母親に大事に大事に育てられてきました。

ある日クロエが母の買い物袋を見ると、母宛の名前が書かれた"Trigoxin"という薬を見つけます。

そしてその晩、母がそれと同じ見た目の薬をクロエ用の薬として飲むように促しました。

何かがおかしいと、クロエはこっそり夜中にネットで調べようとしますが、なぜかインターネットはつながりません。

母親の様子がおかしいのでこっそり薬局に電話して聞いてみると、その薬の効果が自分の持病の症状と酷似していることがわかります。

その日から母親への疑念を深めつつ、疑っていることを気づかれないように振る舞いながら、母親から逃げることを計画しますが・・・

感想(ネタバレあり)

ストリーミング配信の映画です。総じてめちゃくちゃ面白いです。

親の愛は子供を壊し得る

親であれば、子供のためと言いつつ、結局親自身のために行動してしまっていることが大なり小なりあると思います。

本作はその極大値を表現しているので、反面教師として4半期に1度ぐらいみるのもいいかもしれません。

自分の子育てを振り返って本当に子供のためか振り返る良いきっかけになると思います。

2人の微妙な関係性がいい!

母親のサイコパス感、娘の懐疑心・恐怖心の演技がめちゃいいです。

母ダイアンが、娘が何かに気づき始めているのでは、という不安を払拭すべく、娘に質問をし、

他方娘クロエは違和感を持っていることを感じさせないように取り繕う、

この微妙な匙加減の会話が緊張感を生んで素晴らしかったです。

2人の演技と絶妙なやりとりの会話(脚本)が素晴らしい。

トリゴクシン(Trigoxin)は実在する?

映画に登場するTrigoxinという薬は実在しません

ただ、ジゴキシン(Digoxin)という薬が類似の効果を持っており、これをモチーフにしている可能性が高いです。

ジゴキシンは、心臓病治療に使われる薬で、心臓の収縮力を高める効果があり、心臓がより効率良く血液を全身に送り出すのを助けるようです。

ですが副作用もあります。一般的な副作用としては、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢などで、ジゴキシンが過剰に体内にあると、不整脈を悪化させる可能性があるようです。(注意!:医療サイトではないので詳細については医師・薬剤師にご相談を)

映画では歩けなくなるほどの副作用が描かれていましたが、それと同様の副作用まではなさそうです。

良かったシーン

クロエが夜中にこっそりパソコンで調べるシーンがスリルをよく演出していて素晴らしいと思います。

ネットが切れていて調べられないことが分かると、クロエが座る場所からピントが廊下の奥に移されて、薄明かりに見える母親ダイアンがじっとこちらを見ているシーンです。(しかもクロエは気付いていない)

スリラー系ではありがちなシーンですが、母は娘をいつも見ている、ということがこのシーンに凝縮されていました。

どこで見れる?

HuluオリジナルフィルムなのでHuluでは見れます。

今はありませんが、以前はNetflixでも見れました。

時期が来たらまたNetflixでも見れるかもしれません。

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