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見所、実話との違い、主役を動かしたKazu Hiroの存在とは?〜映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」〜

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 (字幕版)

1.はじめに

『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、ジョー・ライト監督によって2017年に公開された歴史ドラマ映画です。

この作品は、イギリスの首相ウィンストン・チャーチルが第二次世界大戦初期、ドイツがベルギー、フランスに侵攻した際に直面した困難な決断を描いています。

この記事では、映画の見所である映像美、史実との違い、そして主役のゲイリー・オールドマンを支えたメイクアップアーティストKazu Hiroの役割について詳しく紹介します。

 

 

2.見所、実話との違い、主役を動かしたKazu Hiroの存在とは?〜映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」〜

2-1. 映像美に込められた監督ジョー・ライトのこだわり

ジョー・ライト監督は、これまでの作品で培ってきた視覚的な美しさとドラマ性を、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でも見事に発揮しています。

この映画では、光と影、構図の巧妙な使い方が際立っており、それが映画全体に強い印象を与えています。

 

まず、映画の冒頭で見られるチャーチルが葉巻に火を付けるシーンは、鳥肌モノのかっこよさでしたね。

 

チャーチルとジョージ6世が会見するシーンでは、王室の威厳とチャーチルの不安定さを対比するために、光と影のコントラストが利用されていました。

 

戦争省に初めて入省する際の螺旋階段のショットでは、カメラが上から下に向かってゆっくりと回転しながら追跡します。

ミュージカル映画のような華麗さを感じさせました。

 

ラジオ演説のシーンでは、暗闇の中で光がチャーチルを照らし出し、彼の言葉が国民にどれほどの影響を与えたかを視覚的に示しています。

ジョー・ライト監督は、このシーンを通して、言葉の力とリーダーシップの重要性を強調していました。

 

 

2-2. 実話との違い:電車に乗るシーンは実際にあったのか?

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』の中で、特に印象的なシーンの一つが、チャーチルがロンドンの地下鉄に乗り込み、一般市民と対話する場面です。

このシーンは、感動的であり、チャーチルが国民と直接向き合い、彼らの意見を聞くというリーダーとしての姿勢を強調しています。

 

しかし、実際にはこのシーンは史実に基づいていないそうです。

監督のジョー・ライト自身も、この場面は「感情的な真実」を描くために創作されたフィクションであることを認めています。

チャーチルは時折「行方不明」になり、ロンドンの街を散策しながら市民の意見を聞くことがあったと言われていますが、地下鉄に乗り込んで市民と話す記録はないようです。

 

このシーンは、歴史的な事実に基づいたものではなく、映画的な演出としての意図が強いですが、その目的は当時の市民の声がチャーチルの意思決定に与えた影響を象徴的に表現することにあります。

これは、観客に対してチャーチルの孤独感や重責、そして国民からの支持が彼の決断にどれほど影響を与えたかを伝えるための強力な手段として機能しています​。

 

記録がないだけで、もしかしたら、本当にあったのかもしれないというロマンもありますね。

 

2-3. 主役ゲイリー・オールドマンを動かしたKazu Hiroの存在

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で、主演のゲイリー・オールドマンが圧倒的な演技を見せた背景には、日本人メイクアップアーティスト、Kazu Hiro(辻一弘)の存在が大きな役割を果たしています。

実際、オールドマンはKazu Hiroでなければチャーチルを演じることはできないとまで言っていたほどです​。

 

Kazu Hiroは、この作品のためにメイクアップ業界に一時的に復帰しました。

当時、彼はすでに10年ほどハリウッドのメイクアップ業界から引退し、アート作品の制作に専念していましたが、オールドマンからの強い要請に応えて復帰することを決意しました。

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彼の手によって生み出されたチャーチルの姿は、リアリティと演技の両立を可能にしました。

 

特に、Kazu Hiroはプロセスについて「試行錯誤の連続だった」と述べています。

初期のメイクアップデザインは、あまりにも重く、仮面のように見えることがありましたが、最終的にはチャーチルの外見を再現しつつ、オールドマンの表情や演技がしっかりと伝わるバランスを見つけ出しました​。

このメイクアップの成果は、映画の中で見事に発揮され、オールドマンのチャーチル役が彼のキャリアを代表するものとなっただけでなく、Kazu Hiro自身も第90回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞する結果となりました​。(日本人初ですが、彼は現在米国籍です。)。

 

 

3.あらすじ


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映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、1940年5月、ウィンストン・チャーチルがイギリスの首相に就任した直後の数日間を描いた歴史ドラマです。

ナチス・ドイツがヨーロッパを侵攻する中、チャーチルは、ドイツと和平交渉を行うか、徹底抗戦するかの重大な決断を迫られます。

映画の冒頭、チャーチルは自らの党内でも支持を失いかけており、彼のリーダーシップが試される場面が続きます。

ジョージ6世との謁見や戦争省での重要な会議、そして国民に向けたラジオ演説などを通じて、彼が如何にして国を戦争に導き、またその困難な道を選んだのかが描かれます。

物語は、チャーチルがナチスと対決することを決意するまでの苦悩と、その決断が国をどのように変えたのかを緊迫感あふれる演出で描いています。

 

 

4.監督・脚本・登場人物

  • 監督:ジョー・ライト
  • 脚本:アンソニー・マクカーテン
  • 主な登場人物:
    • ウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)
    • クレメント・チャーチル(クリスティン・スコット・トーマス)
    • ジョージ6世(ベン・メンデルソーン)
    • エリザベス・レイトン(リリー・ジェームズ)

 

5.最後に

 

 

『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、ウィンストン・チャーチルのリーダーシップと、その背後にある重圧を見事に描き出した作品です。

ジョー・ライト監督の映像美と、ゲイリー・オールドマンの圧巻の演技、そしてKazu Hiroの職人技が一体となって、

この映画を歴史的ドラマの傑作へと導きました。史実とフィクションが巧みに織り交ぜられた物語は、観る者に深い感動と考察を促します。

まだ観ていない方は、ぜひこの名作をお楽しみください。

 

 

作中ではダンケルクの戦いの背景についても描かれており、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」と合わせて視聴すると2倍楽しむことが出来ます。

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以上ありがとうございました。

【参考】