黒澤明監督の「用心棒」(1961年)のご紹介です。
あらすじ
凄腕の剣客である桑畑三十郎*1(三船敏郎)はある村に着いた。
その村ではパワーバランスが拮抗した2組のやくざが日々小競り合いを繰り広げている。
拮抗した状況を見て、彼は一方の組の用心棒として雇ってもらうこととした。
用心棒として抱え込んだ組は既に勝った気で相手の組と潰しにかかる。
いざ対決しようというところで、桑畑三十郎が突然、雇い主から不遜な態度を受けたと用心棒の職を放り出す。
用心棒がいなくなってしまい、さあ大変。
拮抗した双方の組が覚悟も無いままオドオドと戸惑う。
そんな状況を桑畑三十郎は想定通りに事が運んで楽しそうに笑う。
本作は桑畑三十郎が村のやくざたちにイタズラをして自滅させることを企む物語である。
感想
魅力的なキャスト
あらすじで書いた最初のイタズラで、物見やぐらの上に座って楽しそうにしている三船敏郎の笑顔が本当に楽しそうでいいですね。
三船敏郎の演技で有名のようですが、悪役の卯之助を演じた仲代達矢の演技も、表情と立ち姿だけで頭が切れる厄介な悪役が表現されていて、かなりいけてます。
2m超あるかという大男が出演されてますが、この方は羅生門綱五郎(らしょうもんつなごろう)という台湾出身の元力士・プロレスラーのようです。
正直大きすぎて鉄の棍棒でも振り回させたら太刀打ちできないし、新しい用心棒いらないんじゃないかと思ってしまいました。
名前を名乗らぬ格好良さ
あらすじで名前を桑畑三十郎と書いたのですが、彼自身が適当に作った偽名で、作中では名も無き侍状態なんですね。
名も無き侍が報酬欲しさでもなく*2名誉のためでもなく、ただ悪を成敗するという美学に惚れます。
「この紋所が目に入らぬか」と仰々しく名乗るあの方とは大違い。
本作が海外含め、名前を名乗らぬ正義の味方の走りだったらしく*3、映画界にも多大に影響しているそうです。
桑畑三十郎はもらったお金も困った人にすぐに渡しているので、そういう慈愛精神がアメリカ人のキリスト教観にマッチしたのかなあと思いました。
例えば「ある男がマフィアの抗争に巻き込まれた女性を偶然助け、マフィアを撲滅させる。(実は海軍特殊部隊で数々の勲章を授与し、名誉除隊した経歴を持っていたというオマケ付き)」という超テンプレストーリーは洋画であるあるですが、もしかしたら「用心棒」も何かしら影響しているのかもしれません。